シーンが平坦になる。会話は成立しているのに、何も起きていないように見える。
この原因の多くは、二人の力関係が設計されていないことです。
ステータスとは何か
演技の用語でステータスと言うとき、それは身分のことではありません。
その瞬間、どちらが強く出ているかです。
だから、王が低く出て、召使いが高く出る瞬間が成立します。社会的地位と、いま場を握っているかどうかは別だからです。
現実の会議を思い出せば分かります。役職がいちばん上の人が、いちばん強く出ているとは限りません。
何で決まるか
ステータスは、セリフの内容ではほとんど決まりません。振る舞いで決まります。
視線
見続けるほうが高い。先にそらすほうが低い。これがいちばん強く出ます。
動きの量
高いほうが動きません。低いほうが細かく動きます。落ち着かない動きは、そのまま低さとして読まれます。
空間の取り方
広く使うほうが高い。縮こまるほうが低い。
応答の速さ
すぐ返すのは、実は低いことがあります。返す前に一拍置けるのは、待たせられる立場だからです。
声の終わり方
語尾が上がると低くなります。言い切って落とすと高くなります。
設計の手順
シーンごとに、この3つを決めてください。
1. 開始時、どちらが高いか
まずここです。どちらでも構いませんが、決めてください。決まっていないと、両方が同じ強さで喋り、平坦になります。
2. どこで反転するか
ここが山になります。
高低が入れ替わる瞬間に、シーンは動きます。観客はセリフの内容を追わなくても、力関係が変わったことは体で分かります。
反転がないシーンは、内容が濃くても平坦に見えます。
3. 終了時、どちらが高いか
開始時と同じなら、そのシーンでは何も動いていないことになります。それが正しい場合もありますが、意図してそうしているかを確認してください。
上げ下げの幅
もう一つ、実際にやってみると分かることがあります。
どこまで高く出られるかは、人によって上限が違います。
普段から低く出る癖のある人は、高く出ようとしても中程度で止まります。逆もあります。これは性格ではなく、単に慣れていないだけです。
稽古では、同じセリフを最大限高く/最大限低くで言い分ける練習が有効です。自分の可動域が分かります。
そして可動域は広がります。ここも技術です。
セリフを変えずに変える
ステータスの設計が効くのは、セリフを一文字も変えずに関係を変えられるからです。
「わかりました」の一言で、従っているのか、見下しているのか、切り上げようとしているのかが変わります。変わるのは言い方ではなく、視線・動きの量・返す速さです。
演出から「もっと感情を込めて」と言われて途方に暮れるより、「ここは高く出る」と決めるほうが、実行できます。
よくある失敗
全部を高く出そうとする
主役だから強く、と考えると全編が同じ強さになります。低く出る場面がないと、高さが目立ちません。
内容で強さを出そうとする
大きな声、強い言葉。これは高さではなく音量です。むしろ、声を張るのは低さの表れであることが多い。本当に高い立場の人は、声を張る必要がありません。
反転を演技で示そうとする
「ここで逆転した」と分かるように演じると、説明になります。振る舞いを変えるだけで十分です。観客は気づきます。
まとめ
・ステータスは身分ではなく振る舞い
・視線・動きの量・空間・応答速度・語尾で決まる
・開始/反転/終了の3点を決める
・ 反転する瞬間が、そのシーンの山
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