星のふたりごと

なぜ私たちは「鬼滅の刃」に涙するのか?人気アニメから学ぶ人生を豊かにする「与える」という生き方

こんにちは、劇団天文座の森本です。先日、劇団員の古陸と共に収録した「星の2人ごと 第4回」では、国民的人気アニメ「鬼滅の刃」の魅力について深く掘り下げました。そこから見えてきたのは、作品の素晴らしさだけでなく、私たち自身の人生を豊かにするヒントでした。

「鬼滅の刃」が多くの人に愛される理由とは?

敵キャラクターに投影される私たちの心

「鬼滅の刃」に登場する鬼たちは、単なる悪役ではありません。彼らの多くが抱えているのは、**「承認されたい」「必要とされたい」**という、誰もが心の奥底に持つ普遍的な欲求です。

これらの鬼たちは、**「葛藤を正しい形で乗り越えられなかった人たち」**として描かれています。私たちが鬼滅の刃を見て涙するのは、彼らの中に自分自身の影を見つけるからかもしれません。

コロナ禍との奇跡的な重なり

「鬼滅の刃」がブームになったのは、ちょうどコロナ禍の真っ只中でした。主人公・竈門炭治郎が家族を失い、逆境に立ち向かう姿は、仕事や日常を失った私たちの心に深く響いたのではないでしょうか。

炭治郎の魅力は、常に強いわけではなく、**「ちゃんと修行し、ちゃんと努力する」**等身大の姿にあります。この親しみやすさが、多くの人の共感を呼んだのです。

豪華声優陣が作品に深みを与える

「鬼滅の刃」の魅力は、物語だけではありません。

  • 猗窩座役の石田彰さん
  • 童磨役の宮野真守さん
  • 炭治郎の師匠・鱗滝左近次役の大塚芳忠さん
  • 冨岡義勇役の櫻井孝宏さん

これらの豪華声優陣と、細部にわたるこだわりの作画・音響が、作品全体の完成度を押し上げています。

演劇の稽古から見えた「心の課題」

「よく見られたい」という欲求の正体

稽古での即興劇を通して、私自身の大きな課題が見えてきました。それは**「よく見られたい」**という強い欲求です。

特に「かっこ悪いところを見られたくない」という気持ちが強く、自分の短所や脆い部分に触れられることを恐れていることに気づきました。

この気持ちは他人との比較にも表れます。相手がセリフを覚えているのに自分が覚えていない時は焦りを感じ、逆の状況では優越感を感じて安心する。**「誰かよりも下」**にいる状態が嫌で、「同じか上」の状況に安心感を覚える傾向があることを認めざるを得ませんでした。

幼少期の体験が作る「心の穴」

この「よく見られたい」という気持ちの根源を辿ると、幼少期の体験に行き着きます。

父親不在により「お父さん的な立ち位置」を求められ、「良い子でいなければならない」という重圧を感じていました。弟の誕生により「下に見られている」という感覚も生まれました。

子供の時に感じた**「欠乏」や「足りていない」という感覚**は、無意識のうちに一生突きまとうサブテキストとして残るものです。その「足りない」部分を補おうとして、「欲しい欲しい」という状態になってしまうのです。

人生を変える「与える」という生き方

承認の循環:認められたいならまず認める

この「欠乏」を埋める解決策として見えてきたのが、**「与える」**ことでした。

自分が誰かに「認められたい」と願うなら、まず自分が誰かを「認める」ことから始める。相手役がセリフを覚えているのを見て「すごいじゃん」と素直に認めること。これまでの人生で、親を含め誰かを承認してこなかったことに気づき、ハッとしました。

愛も「与える」ことから始まる

幼少期に親からもらえなかった愛があると感じているなら、今親に「くれ」と言っても満たされません。そうではなく、**「自分が愛を与えるしかない」**のです。

母親に「いつもありがとう」と伝えるだけでも、変化が生まれるかもしれません。

「ギブ」することで得られる真の充足感

私自身、最も怖いのは「お金がない状態」です。しかし、いくら稼いで高い家賃の家に住んだり、ブランド品を買ったりしても、それだけでは満たされないと感じています。

本当に満たされるのは、自分がお金を使って**「みんながやりたいことをやれる状況を作ったり」「力を貸せる」**など、他者に「与える」ことができた時です。

**「もらう」のではなく、「ひたすらギブしていく」**ことが、心の穴を埋める道なのかもしれません。

心の学び:空のコップと泉の話

私たちは皆、心の中に「承認」や「愛情」のコップを持っています。幼い頃にそのコップが満たされなかった経験があると、大人になっても「もっと誰かに満たしてほしい」と外からの承認や愛情を求め続けるかもしれません。

しかし、いくら誰かが水を注いでくれても、コップの底に穴が空いていたり、そもそもコップ自体が空っぽだと感じていたりすると、いつまで経っても満たされません。

ここで大切なのが、「与える」という考え方です。

自分が水をもらうのを待つのではなく、自らが泉となり、周りの人々のコップに水を注いであげるのです。そうすることで、不思議なことに自分のコップも満たされ始めます。

それは、他者に与える行為そのものが、私たち自身の心を満たし、充足感をもたらすからです。

おわりに:演劇から学ぶ人生の教訓

「鬼滅の刃」の分析から始まった今回の話は、最終的に人生の深い学びへと発展しました。

日々の継続と自己成長は大切ですが、心の壁にぶつかった時には、**「与える」**という視点を持つことが、新たな突破口を開くかもしれません。

承認欲求のコップを満たすのではなく、自らが承認の泉となることで、真の充足感が得られるのです。

人生に悩みを抱えている方々、劇団天文座はいつでも皆さんのご相談をお待ちしております。演劇を通して、一緒に人生を豊かにしていきましょう。


劇団天文座では、演劇を「人生を豊かにするための道具」として捉え、日々の活動を続けています。私たちの「星の2人ごと」では、作品分析から人生の深い学びまで、様々なテーマについて語り合っています。