「大丈夫」という言葉があります。
本当に平気なときも、限界のときも、まったく同じ三文字が出ます。同じ音なのに、意味が正反対になる。
この差を決めているものを、演劇ではサブテキストと呼びます。
台詞の下に流れているもの
サブテキストとは、口に出される言葉の下にある、本当の意図のことです。
「大丈夫」の下には、こんな候補があります。
・心配しないでほしい
・これ以上聞かないでほしい
・自分に言い聞かせている
・相手を試している
どれを流すかで、場面の意味が変わります。台詞は一言も変わっていないのに。
決めていない台詞は、必ずぐらつく
稽古で最も多い問題が、ここです。
台詞は覚えているので、言えます。でも「なぜ今それを言うのか」が決まっていないと、言い方が毎回変わります。安定しないか、あるいは何も考えずに一定になる。
どちらも客席には伝わります。理屈ではなく、違和感として届きます。
決め方には順番がある
私たちは、次の順で決めます。
1. この台詞で、相手をどうしたいのか(動詞で決める)
2. なぜそうしたいのか
3. 言わなかった選択肢は何か
4. 直前に何を考えていたか
要点は1番です。「悲しい気持ちで」ではなく「 黙らせる 」「 引き止める 」「 安心させる 」のように、相手に対する動詞で決めます。
感情で決めると再現できません。行動で決めると再現できます。
なぜ動詞だと安定するのか
感情は、自分の内側の状態です。狙って出すことができません。
一方、行動は外に向いています。相手を引き止めようとすれば、体は勝手にそう動く。感情は結果としてついてきます。
順番が逆だと、感情を作ろうとして手が止まります。
日常の会話も同じ構造
これは演技だけの話ではありません。
「お疲れさまです」も「すみません」も、下に流れているものは毎回違います。言葉は摩耗していても、意図は摩耗していない。
会話がうまい人は、言葉を選ぶのがうまいのではなく、自分が相手をどうしたいのかを分かっているのだと思います。
次に誰かと話すとき、自分が相手をどうしたいのか。一度だけ、言葉にしてみてください。
劇団天文座は大阪・新大阪の稽古場で、毎日19時から22時まで稽古しています。見学はいつでも歓迎しています。
あわせて読みたい
・ 脚本分析のやり方|セリフを500個の要素に分解するマインドマップ手法
・ 「ごめんな」を英語にすると演技が変わる|劇団の稽古で使う言語変換法
・ セリフが先に出る癖の直し方|「動いてから、話す」という原則