稽古中、演出から何度も出る問いがあります。
「今、五感のどこを使ってた?」
演じ終えた直後に聞かれます。答えられないことも多い。夢中でやっているので、自分が何を使っていたか把握していないからです。
同じ場面を、感覚を変えて繰り返す
私たちは、同じ場面を何度も繰り返します。ただし毎回、使う感覚器官を変えます。
・視覚を中心に置いてやる
・聴覚を中心に置いてやる
・触覚を中心に置いてやる
台詞も動きも変えません。どこに注意を置くかだけを変える。
すると、同じ場面がまったく別のものになります。相手の表情を見ている芝居と、相手の声の震えを聞いている芝居では、出てくる反応が違う。
なぜ解像度が上がるのか
人は普段、五感を混ぜて使っています。意識せずに全部を同時に処理している。
だから「もっとよく感じて」と言われても、どこをどう感じればいいのか分かりません。混ざったものは、強くできない。
一つに絞ると、そこの解像度だけが上がります。上がった状態を体が覚えると、混ぜて使うときにも密度が変わる。
「見る」と「見える」は違う
これをやっていて気づいたのは、見ているつもりで見ていないことの多さです。
相手の顔を見ている。でも、相手が今どんな表情なのかを聞かれると答えられない。視線は向いているのに、情報を取っていない。
聴覚も同じです。相手の台詞を聞いている。でも、声が少し震えていたことに気づいていない。
これは日常でも起きていることだと思います。人の話を聞きながら、次に何を言うか考えている。目は合っているのに、情報が入っていない。
一日一つ、決めてみる
もし試すなら、日常でもできます。
今日は音だけを意識する。今日は手触りだけを意識する。一つに絞ると、普段どれだけ取りこぼしているかが分かります。
演技のためだけの訓練ではありません。世界の解像度そのものが上がる作業だと思っています。
今日、あなたはどの感覚を使っていましたか。
劇団天文座|大阪・新大阪、毎日19時から22時。「演劇は才能じゃない」を合言葉に活動しています。
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