星のふたりごと

【第2回放送】劇団天文座ラジオ「星の2人ごと」長所と短所は紙一重

劇団天文座ラジオ「星の2人ごと」が見せる、”ガチゆる”な番組作りの真実

「劇団天文座ラジオ 星の2人ごと」第2回が配信されましたね!劇団天文座の座長である森本と、古谷りくによるこの番組は、「今日も適当にゆるゆるダラダラと喋っていけたらな」というコンセプトのもと、リラックスした雰囲気が魅力です。今回は、その収録状況から見えてくる、彼らのユニークな番組制作スタイルを深掘りしていきましょう。


収録状況:ゆるさとリアルが共存する魅力

第2回は、パーソナリティ2人の間に広がる、まさに「ゆるゆるダラダラ」とした雰囲気が特徴的です。番組冒頭で「ま、基本的にね、ディレクターズカットで行くんでね、僕たちはね」と語られているように、収録中の会話やハプニングもそのまま活かすスタンスが見て取れます。

前回(第1回)では「自分の声がもうちゃんと入ってなくて」「僕声ちっ」といった音声の問題があったため、今回はマイクに近づいて喋るよう意識しているとのこと。これは、後で字幕を付ける作業を簡単にする目的もあるそうです。

実は、第2回は前日に収録される予定でしたが、森本座長が夏風邪を引いて体調不良だったため延期されたという裏話も明かされました。リスナーに対して「クーラーにはお気をつけください」と注意喚起する場面もあり、彼らの飾らない日常が垣間見える瞬間です。


「編集点」から見える制作への真摯な姿勢

番組の途中で、森本座長が「今編集点作りました。ありがとうございます」と発言する場面がありました。森本座長は動画や映像の編集を行うため、「編集点ってすごい大事だなと思って」いるとのこと。彼は「編集点」を「ここでね、切ったら次に行きやすいってところ」と具体的に説明しています。

これに対し、りくは「初めて聞きました」と新鮮な反応を見せており、森本座長が「あ、学びました」と返すやり取りは、このラジオ番組が単なるフリートークの場に留まらず、出演者間の知識共有や学びの場となっていることを示唆しています。彼らの制作は、一見ゆるい雰囲気の中にも、プロフェッショナルな効率性を追求する意識が光っています。


パーソナリティの素顔が見える「日常の断片」

収録中にパーソナリティが喫煙する場面も、この番組ならではの親密さを生み出しています。りくは吸っているタバコについて「赤マル(マルボロ)でお届けしたい」と銘柄を公表。森本座長は「手巻きタバコ。のブラックメンソール」を吸っており、「夏場はメンソール。夏場はそうめんとメンソール」と、季節に応じた好みを語る一幕も。さらには「流しそうめん、流しタバコ」というユーモラスな表現まで登場しました。

注目すべきは、森本座長が「もうタバコなくなりました」と発言したことが、番組の終了を告げる合図の一つとなったこと。これは、収録が厳密な時間管理や台本に縛られるのではなく、パーソナリティの日常的な行動や状況に即して進行していることを象徴的に表しており、リスナーにとってはより個人的で飾らない「2人ごと」である印象を与えます。


「収録時間:約20分」が体現するコンセプト

番組のエンディングで、森本座長は「もう20分喋っ」「今日も20分ほど喋っております」と、今回の収録時間が約20分であることを明言しました。この約20分という時間設定は、番組冒頭で掲げられた「適当にゆるゆるダラダラ」というコンセプトと見事に一致しています。

長時間の収録を意図するのではなく、フリートーク形式で会話が続く限りといった、リラックスした制作姿勢がうかがえます。また、「タバコがなくなった」という森本座長の個人的な状況が収録の終わりを告げるきっかけとなったことも、この番組がパーソナリティのリアルな日常や気分に寄り添って制作されていることを物語っています。20分という長さは、彼らのフリートークを気軽に楽しめる、絶妙なボリュームといえるでしょう。


番組内で展開された「深掘り」と「学び」の瞬間

約20分の収録時間の中で、彼らは様々な話題を興味深く深掘りしています。

『国宝』と「サブテキスト」の概念

映画『国宝』の話題から、劇団の稽古でも話される「サブテキスト」の概念へと発展しました。

  • 顕在的サブテキスト:表面に出てこない内心の思い
  • 無意識的サブテキスト:作者の意図していなかった社会的背景などを読み解くこと

りくは、『国宝』が「歌舞伎っていう閉鎖的な空間」が「SNSを通じて分かるようになってきた」現代に上映される意味を考察しました。森本座長は、現代の「鬼滅の刃」などの「日本らしい」「日本の伝統的なもの」が注目される背景に、インバウンドや関西万博など「国として上げてる」戦略がある可能性を洞察しています。

さらに、「日本人より外国人の方が大切なのか」という社会的サブテキストに対し、「日本って素晴らしいんだよ」「日本の文化っていうのはめちゃくちゃいいんだよ大事だよねって本当にもっと日本を大事にしていこうね」という作者の無意識的サブテキストがあった可能性も示唆されました。

「長所を伸ばす」という哲学

稽古の話から、彼らが実践している「長所を伸ばす」という哲学が語られました。

  • 短所を克服する労力よりも、長所を伸ばす方が総合的にスキルアップに繋がりやすいという考え方
  • プロ野球選手の上原浩治の例を挙げ、自身の強み(コントロールとフォーク)を磨き続けた結果、メジャーリーグでも活躍できたことを具体例として説明
  • 短所に目を向けると「できてないなとかダメなのかな」というネガティブなサブテキストが生まれ、長所が伸びなくなる、あるいは下がるという鋭い洞察
  • さらに、「離見の見(りけんのけん)」という演技の考え方(舞台で演じる自分、客席から見る自分、その両方を見る自分という3つの視点)も紹介され、自己を客観視し長所を見つける重要性が強調されました
  • 短所も逆転の発想で「笑いに変える」「共感を生む」サブテキストに変えることができるという、ユニークな視点も提示されました(例:アメトークの「運動できない芸人」「絵かけない芸人」)

このラジオ番組自体も「自分の課題が見えて」学びの場になっていると、パーソナリティ自身が実感しているようです。


次回への期待と番組の魅力

今回の第2回のテーマは「(長所と短所は紙一重)」に決まりました。番組の締めくくりには、「りく君が夏風邪引かなかったらまた収録します」とユーモラスに次回の収録に触れ、「今日はもう冷房つけませんので熱中症になるわ」と、体調管理への配慮も忘れず、リスナーに「いい夢見てください」と温かく締めくくられました。

「星の2人ごと」は、ゆるいおしゃべりの中に、プロフェッショナルな制作意識や深い考察、そして何よりも人間味あふれるパーソナリティの個性が詰まった番組です。彼らのラジオは、まるで友人の家に遊びに行って、飾らない会話を一緒に楽しむような、心地よい時間を提供してくれます。制作の裏側を垣間見せながらも、演劇に対する真摯な姿勢と日常の等身大の魅力を併せ持つ、希有なラジオ番組といえるでしょう。